
《 目 次 》
本場の達人たちが教えてくれた
これだけは知っておきたい
「うまいワインを飲む秘訣」
– N°50 –
7回のワインブームで間違った飲み方が広がった
日本国内ではワインブームが7回起きたという通説がある(1972年の第1次ブームから始まり、2012年の第7次まで)。
40年間で複数回あったワインブーム。そのブームの中で、ワインの間違った飲み方が広がったことを知っている人は少ない。
『ワインの間違った情報が広まり、また低品質のワインが安易に売られた結果、ワインの本当の美味しさを知らない人が増えてしまった。』
そう話すのは、「本場の達人たちが教えてくれた 本当のワインの愉しみ方」の著者、フランスワイン専門輸入商の加勢利彦さん(株式会社ヴィーヴァン倶楽部:八王子市南大沢)。
今回は、加勢さんの著書「本当のワインの愉しみ方」より『No50 – 健康なワインと傷んだワインの違いを知る』について書いています。
読み切りサイズのコラムになっています。ぜひ最後までワインの世界をお愉しみください。
本場の達人たちが教えてくれた
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– N°50-
健康なワインと傷んだワインの違いを知る
《 目 次 》 |
1.傷んだワインを飲まされている 2.ワインの傷む理由 3.プロでも知らずに傷んだワインを買って飲んでいる |
傷んだワインを飲まされている
傷んだワインを飲まされても、それに気づかない人が少なくない。人によっては、運悪くそういったワインから飲み始める場合もあり、それに慣れてしまえば違和感を感じなくなる。
少し敏感な味覚を持つ人ならば、傷んだワインに心地よさを感じないだろう。それだけならいいのだが、ワインとは美味しくない飲み物だと思わされることにもなりかねない。どちらにしても不幸なことである。
いいワインが造られても、ビン詰めされた後の輸送や保管の状態が良くなければ中身が傷むことになる。こうして傷んだものは、もはやワイン本来の色や香りや味わいを楽しませてはくれない。
ワインの傷む理由
ワインが傷む理由はいろいろある。
コルクの脇から液が外に漏れ、ビンの中に空気が入ることでワインが酸化したり、保管の温度や湿度が適切でなければワインを傷める原因となる。また、振動するような場所や強い光が当たるところに置くのも良くないとされる。
ワインが傷めば、様々な不愉快な様相を呈することになる。色は美しさや輝きを失い、香りには心地よさを感じなくなり、不快な臭いを伴うこともある。味には苦味が混じったり、旨味を感じさせなくなる。
こうなると、せっかくのワインも台無しである。傷みが顕著であれば、それに気づきやすいが、程度によっては、ワインが傷んでいることになかなか気がつかない。
また、ワインが美味しくないと感じても、それが元々の造りが良くないためなのか、保管の問題によるものかを見極めるのが難しい場合もある。
保管中の品質劣化で最もわかりやすく頻繁に見られるものは、急激な温度の変化やコルクの質の問題でビン内のワインが液漏れを起こし、それによってワインが酸化することである。
液漏れが起きても、短時間内に飲んでしまえばさほど支障はないが、日数が経つにつれてワインの傷みが増す。一度液漏れになったら、早めに飲んでしまうほかない。
品質劣化の度合いが著しい場合は別にして、健康なワインと傷んだワインの違いは意外とわかりにくいものである。
プロでも知らずに傷んだワインを買って飲んでいる
傷んだワインでも、所詮こんなものだろうと思って飲んでしまうことも多い。
ワイン講座などで、学習のために液漏れのしたサンプルを試飲してもらうことがあるが、「こんなワインならば、日頃よく飲んでいる」といった声さえ聞く。
知らずに傷んだワインを買って飲んでいるというわけである。これは一般の消費者だけでなく、プロでさえも例外とはいえないようだ。
以前、或るワイン雑誌のテイスティング座談会に参加した。20本くらいのワインを試飲し、そのあとに各自が講評を述べるというものであった。並んでいたサンプルの中に液漏れを起こし、ビンの口が白く汚れているサンプルがあった。明らかに健全な状態ではなかったので、テイスティングから外すように提案した。
しかし、主催者はこの申し出に応じてくれなかった。
この場に、偶然にも、液漏れのしたワインと同じ銘柄のボトルがもう一本あった。こちらの方は正常な状態にあった。講評のときに、前者のサンプルがやはり傷んでいることを指摘した。
ところが、事もあろうに、同席していたプロの一人が、正常なボトルよりも、液漏れのしたボトルの方がむしろ味が良い、といった発言をした。
この銘柄は私がボルドーに住んでいたときの知り合いのシャトーのワインであり、その味をよく知っていた。席上、たまたまこのシャトーを訪問したばかりの人がいて、その人が正常なボトルの味の方が現地で飲んだワインの味と同じであることを確認してくれた。これで落着したが、プロが健康なワインと傷んだワインの違いがわからないのを目の当たりにして少なからず驚かされた。
こんなことになるのは、数をこなしても、健康なワインと傷んだワインをごちゃ混ぜに飲み、その違いをしっかりと認識していないためだろう。
できれば、最初は、傷んでいない健康なワインだけを飲み、その味を体で覚えることが望ましい。そうすれば、傷んだワインに出会ったとき、ある種の違和感を感じて、それに気づくようになる。
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